この記事で分かること:年間生活費240万円・300万円・360万円と、年間労働所得0円・60万円・120万円・180万円を組み合わせ、資産で補う不足額と3%相当の必要資産を12パターンで比較します。
家計簿の月額だけでは、税金、社会保険料、家電、修繕などの不定期支出が抜けることがあります。現在の支出をそのまま将来へ延長せず、年間額と労働所得を分けて考えます。
FIREに必要な資産額を考えるとき、最初の材料になるのは現在の生活費です。家計簿を一年分集計し、その金額を将来も使うと仮定すれば、計算を始められます。
ただし、仕事を辞めたり働く日数を減らしたりすれば、暮らし方そのものが変わります。今の生活費は重要な出発点ですが、そのままFIRE後の生活費になるとは限りません。
今の家計簿には、現在の働き方が入っている
通勤費、仕事用の服、外での昼食、疲れた日に使うサービスなどは、働き方が変わると減る可能性があります。会社が負担していた交通費や福利厚生は、家計簿に支出として現れていない場合もあります。
一方、家にいる時間が増えれば、光熱費や食費が増えることがあります。自由な時間に外出、旅行、学びを選ぶなら、その費用も必要です。仕事がなくなることで減る支出だけを見積もると、FIRE後の生活を小さく計算しすぎます。
毎月の支出と、数年に一度の支出を分ける
家賃や通信費のような毎月の支出は把握しやすいものです。しかし、家電の買い替え、住まいの修繕、医療費、冠婚葬祭などは、毎月の家計簿だけでは小さく見えます。
直近一年に発生しなかったからといって、将来もゼロとは限りません。数年分の履歴があれば平均し、なければ別枠の予備費として置くほうが、通常月の支出だけで計算するより現実に近づきます。
物価上昇でFIRE目標額が変わる試算で考えたように、計算は前提を変えるだけで動きます。生活費の集計期間も、その前提の一つです。
支出を三つの箱に分けてみる
将来の生活費を一つの数字で決める前に、現在の支出を次の三つに分けると変化を考えやすくなります。
- 働き方が変わっても残る基礎的な支出
- 通勤や仕事に伴い、減る可能性がある支出
- 時間の増加や年齢によって、増える可能性がある支出
大切なのは、すべてを正確に予測することではありません。今の金額が固定されると考えず、何が動くのかを先に見つけることです。
一つの生活費ではなく、幅を持たせる
通常の年、支出を抑える年、医療や買い替えが重なる年では、必要額が違います。そこで、最低限の生活費だけでなく、標準的な生活費と、支出が増えた場合の生活費を並べます。
最低額だけを使えばFIREは近く見えますが、想定外の支出が起きるたびに計画が崩れます。反対に、あらゆる不安を最大額で積み上げれば、いつまでも十分とは感じられません。幅を持たせることで、どの支出なら調整でき、どこからは予備資金が必要かを判断できます。
FIREの目標額を下げるために、生活費を削り続けるべきかで整理したとおり、続けられない節約を将来の標準にするのは危険です。試算には、特別に我慢した月ではなく、無理なく続いた暮らしを使う必要があります。
家計簿は答えではなく、現在地になる
今の家計簿は、FIRE後の生活費を知るための完成した答えではありません。それでも、想像だけで決めるより確かな現在地です。
まず実績を出し、働き方で減るもの、時間や年齢で増えるもの、毎年は出ないものを補います。そして一つの金額に固定せず、複数の条件で試算します。
FIRE後の暮らしを正確に当てることはできません。だからこそ、数字を一度決めて終えるのではなく、暮らしが変わるたびに更新できる形にしておくことが、計画を長く使う方法になります。
数値モデル:生活費×労働所得で必要資産はいくら変わるか
ここからは実在人物の家計ではなく、比較のための仮定です。資産から毎年使う割合を3%とした場合、必要資産は次の式で求められます。
必要資産 =(年間生活費-年間労働所得)÷ 3%
年間生活費と手取り労働所得を組み合わせると、必要資産額は次のようになります。
| 年間生活費 | 労働所得0円 | 年60万円 | 年120万円 | 年180万円 |
|---|---|---|---|---|
| 240万円 | 8,000万円 | 6,000万円 | 4,000万円 | 2,000万円 |
| 300万円 | 1億円 | 8,000万円 | 6,000万円 | 4,000万円 |
| 360万円 | 1億2,000万円 | 1億円 | 8,000万円 | 6,000万円 |
たとえば年間生活費300万円をすべて資産から賄うなら、年3%の条件では必要資産は1億円です。年間120万円を働いて補うなら、資産から必要なのは180万円となり、必要資産は6,000万円へ下がります。
「生活費×25倍」だけでは見えない部分
必要資産を生活費だけで計算すると、働くか働かないかが0か1になります。しかし実際には、月5万円だけ働く、繁忙期だけ働く、体調のよい年だけ多めに働くという中間があります。労働所得を0円、60万円、120万円、180万円と段階で置けば、目標資産も連続的に変えられます。
一方で、労働所得を永久に続く前提にするのも危険です。そこで計画を二段に分けます。
- 移行期:一定の労働所得がある前提で必要資産を計算する
- 完全離脱期:労働所得を0円にして必要資産を再計算する
移行期の必要資産に到達したら仕事を減らし、その後も資産形成を続けながら完全離脱期へ移る。この形なら、「目標額に届くまで働き方を一切変えられない」という硬い計画を避けられます。
家計簿から拾う数字は平均額だけではない
表へ入れる年間生活費は、直近1か月を12倍するより、少なくとも通常費・年払い・数年に一度の支出を分けて考える方が安全です。
- 通常費:家賃、食費、光熱費、通信費など
- 年払い:保険、税金、更新料、帰省など
- 不定期費:家電、医療、引越し、修繕など
不定期費をゼロにすると必要資産を過小評価します。反対に、人生最大級の支出を毎年起きるものとして入れると過大評価します。数年分を年平均へ直すか、生活防衛資金として別枠に置くのが分かりやすい方法です。
FIREの途中で働く日数を増やしたら、後退なのかでは、年間不足額を勤務日数へ変換しています。FIREの目標額を下げるために、生活費を削り続けるべきかでは、20年間の資産残高を比較しています。
※3%は比較用に置いた仮定であり、安全な取崩率を保証するものではありません。税・社会保険、相場変動、物価上昇、資産配分は別途考慮が必要です。
三つの数字を同じ条件で確認する
FIREの計画では、生活費、労働所得、現金を別々に決めると前提がずれることがあります。税金・社会保険料を含めた生活費と、相場下落時に備える現金額も同じ年間条件へそろえて確認してください。

